子供の肘が抜けた?!肘内障とその見分け方とは
アメリカなどでは愛称としてリトルモンスターなどと呼ばれることがある子どもたちですが、存在するだけで場の雰囲気を和やかにし、行動のひとつひとつを取ってみてもかわいらしく、まさに地上にいる天使と形容しても差し付けないと思います。
しかし、実際に四六時中ともに行動するとなるとかわいいだけでは済まされないことがたくさん出てきます。まだ歩けない時分では嘔吐したり、所かまわず泣いたりを繰り返したり、歩けるようになると少し目を離したすきにどこへでも脱走してしまうことがしばしばとあり、ご両親の心配は尽きないものです。
昨今では子供用のハーネスが賛否を巻き起こしたりしていますが、それを活用するのも仕方ないといえるほどの行動力を持っています。元気なのは大変いいことですが、例えばどこかに行くのを阻止するために子供の手を引っ張る時などにはケガへの注意を念頭においておくようにしましょう。
今回ご紹介するのはそういった行動しようとしている子供の手を引っ張ることで肘の関節が抜けてしまう肘内障(ちゅうないしょう)というケガについてです。肘内障は残念なことに興味本位でどこへでもいってしまう、身体の出来上がっていない年齢期によく見られ、起こった際には動けないほどの痛みを引き起こしますので外出どころではなくなってしまう事が考えられます。交通事故などもっとおそろしいことはたくさんありますが、日常のケガでこういったものがあるという事を念頭におき、是非、記事を読んでみてください。それでは始めてまいります。
肘内障とは?
子供の手を強く引っ張ったり手を掴んで持ち上げる動作をした時に、突然子供が腕をだらんと下げたまま動かさなくなってしまうことがあります。これは多くの場合肘関節が亜脱臼を起こしたためで、このような怪我を「肘内障」と言います。
もともと人の関節部分には「靭帯」という骨と骨と繋ぐ組織が存在しており、この靭帯のおかげで関節を動かしても骨は外れることなくしっかりと固定されています。肘関節で言えば、「輪状靭帯」という靭帯が前腕の骨の頭である「橈骨頭」に覆いかぶさっており、これが腕を回転させるときに骨を支える役割を果たしているのですが、子供はまだ橈骨頭が小さいために、腕を強く引っ張るだけで輪状靭帯が外側へずれてしまうことがあります。これが「肘内障」。靭帯が外れてしまったために関節部分の骨を固定するものがなくなり、本来の位置からずれかかっている状態です。
肘内障は1歳未満の赤ちゃんから6歳くらいまでの幼児に多く見られる怪我で、そのほとんどは子供の腕を強く引っ張ったことで起こります。例えば手を繋いでいる時に子供が突然走り出したり、転びそうになったので腕を引っ張って起こそうとしたり、あるいは子供の手を握って持ち上げる「高い高い」をしようとした時などが、その代表的な例です。その他の原因としては、子供自身が転んで手をついたり腕をひねったり、遊んでいて肘を打ったりしたために発症するケースもあります。
肘内障の見分け方
肘内障を起こしても子供本人には自分に何が起こったのか分かりませんし説明もできませんから、子供の腕の異変に気が付いたなら大人が肘内障かどうかを確認してあげましょう。最も簡単な確認方法は、子供に腕を挙げた「万歳」の格好ができるかどうか聞いてみること。肘内障の場合は万歳をすることができません。
また肘内障の場合輪状靭帯がずれているだけなので関節を動かそうとしなければ痛みは発生しませんし、肘は動かなくても手の指は問題なく動かすことができます。また患部が腫れたり手の指が青白く変色したりすることもないため、動かさなくても常に痛い、患部が腫れる、手の指が青白くなる(血流障害)といった症状を見せる骨折との違いを見分けることができます。
肘内障であることが確かであれば、子供の肘関節を軽く曲げて橈骨頭を抑えながら前腕を手のひらが下になるように回転させる「回内法」で治してあげることができます。コツを掴めば簡単なのですが、自信がない人は専門家に診てもらうようにしましょう。
まとめ
今回は幼児期に腕を突然ひっぱってしまうことで起こる亜脱臼、肘内障について記事を書いてまいりました。冒頭にもあるように子供は好奇心が先立つと大人のいう事や危険を顧みず走り出してしまうことも珍しくありません。
ですから、よほど暴力的に腕を引っ張って亜脱臼を起こしたのでなければ、肘内障を引き起こした原因は突然走り出したこどもと、止めようとして腕を引っ張った大人の両方にあると言えます。そこで肘内障を再発させない、あるいは予防するためには約束を子供と取り付けるようにしましょう。
約束といっても内容は単純で、車や交通機関、あるいは自転車等を降りる前に、○○をおりても走り出さない。または建物が見えても走り出さない。ということを適切なタイミングで伝えてあげることです。子どもの好奇心はとても大きなものですが、好奇心と身体が走り出す前に約束を思い出させてあげると意外という事を聞いてくれるものなので、是非、試してみてください。