急なぎっくり腰は正しい応急処置で早く治そう!ぎっくり腰のセルフケア方法

2018年7月18日

いすから急に立ち上がったとき、突然グキッと激痛が…
子供を抱っこしたときの腰の違和感が一晩で動けないほどの痛みに…

このような「ぎっくり腰」の経験はありませんか?

ぎっくり腰になるとひどい痛みで動けない…というケースも少なくありません。
ぎっくり腰になってすぐの行動でその後の治療期間にかかわることもあります。

速やかな回復のためにも事前に正しい知識を持っておきましょう。

今回は、病院や整骨院などに行くまでの応急処置として、ぎっくり腰になってしまったときにすべきことをご紹介します。

 

ぎっくり腰とは

ぎっくり腰という症状を知らない方はいないでしょう。
おじいちゃんやおばあちゃんから聞いたことがある、また自分自身が体験したなど、なじみのある症状だと思います。

腰が急にグキッとなって、激痛が走るこのぎっくり腰は、正式には「急性腰痛症」といいます。

急性腰痛症とは、突然腰に痛みが起こる関節捻挫や筋肉の損傷、筋膜性炎症などの症状です。

重いものを持ち上げようとしたときやくしゃみをしたとき、物を拾おうとかがんだ時など、日常の何気ない動作で起こることがあります。

ぎっくり腰の症状はさまざまですが、多くの方に見られるのがこれらの症状です。

・突然激痛が走り、動くことができなくなる
・お辞儀をすることができない
・上半身を起こすことができない
・最初は違和感があるくらいだったが、時間がたつと痛みが出てくる
・歩くことができない
・くしゃみやせきをすると、痛みが強くなる
・寝返りをすると痛みが出る

このように最初の2.3日は、激しい痛みのため動くことが難しい場合が多いですが、1週間から10日ほどで痛みが引くケースがほとんどです。

 

ぎっくり腰の豆知識「魔女の一撃」

急激に強い痛みが襲うぎっくり腰。
実は、ドイツでは「魔女の一撃」ともいわれていたほどなんです。

Is pain shooting down your leg – perhaps with tingling or numbness?
Well, it may be sciatica – a medical term often caused by a low-back condition.
Early Germans called sciatica “the witch’s shot” because a sharp pain came on suddenly, perhaps due to a devilish connection.

(引用:Sciatica Treatment―NJ East Brunswick NJ)

これによると、かつてドイツ人は、腰に突然起こる鋭い痛みは、悪魔とのつながりによるものかもしれないと考えたことからそのように呼んでいたそうです。

魔女は、古くから悪魔に授けられた力によって、悪天候を招いたり、人や家畜に害を及ぼしたりする存在だと考えられていました。

ちなみに15世紀から17世紀にかけて行われた魔女狩り。
これがもっとも盛んに行われた地域をご存知でしょうか?

なんと、ドイツだという説があるようです。

魔女狩りは、元々キリスト教に背く者を裁判にかけるもので異端審問裁判から始まったものでした。
1428年のスイスで公式に魔女を取り扱った裁判が行われ、18世紀までヨーロッパ全土で4万人が処刑されたと言われています。

魔女狩りの時代を開くきっかけになったといわれている本があります。

それが、ドイツ人の異端審問官であったハインリヒ・クラーメルによって『魔女に与える鉄槌』です。
これには、魔女の定義やその能力に関する問題、魔女の悪行から魔女裁判の心得・手引きまでかかれています。

実際には、魔女といっても女性だけでなく、男性も罪に問われたケースや猫を飼っていたからなどいうとんでもない理由でとらわれたというケースもあるようです。

現代では、魔女狩りは社会不安から発生した集団ヒステリー現象だと考えられています。

また、このような記述もありました。

The Celts called sciatica “the elf’s arrow” because they felt as if an elf shot them.

(引用:Sciatica Treatment―NJ East Brunswick NJ)

ケルト人は、「エルフの矢」と呼んでいたようです。

エルフというのは、日本語では妖精と訳されることも多く、魔法の力を持つとされています。

だそのイメージは、国によってかなり違いがあり、北欧神話におけるエルフは、美しく、強い力を持ち、自然と豊かさをつかさどる小神族だったようです。
しかし、一方で、ドイツでは人や家畜に病気を引き起こしたり、悪夢を見せたりする、一癖あるいたずら者だと考えられていました。

ちなみに英語でぎっくり腰は『strained back』というようです。
もし海外でぎっくり腰になってしまったら、“I have a strained back."と伝えると良いでしょう。

もちろんぎっくり腰にならないに越したことはありません!
最後に予防法もありますので、気になる方はぜひご覧ください。

 

ぎっくり腰4つのタイプ

ぎっくり腰は、大きく分けて次の4つのタイプに分かれます。



1.筋・筋膜性腰痛
2.腰椎椎間板ヘルニア
3.腰椎椎間関節捻挫
4.仙腸関節性腰痛


 

【ぎっくり腰のタイプ】

1.筋・筋膜性腰痛

筋・筋膜性腰痛は、主にスポーツによって起こる腰の筋肉や筋膜の損傷による腰痛です。
次のような症状を併発する場合があります。

・首や肩、肩甲骨のこり
・腰椎椎間板ヘルニア
・脊柱狭窄症
・足首の痛み
・外反母趾

腰の痛みによって全身のバランスが崩れ、このような不調が出やすくなってしまうのです。

筋・筋膜性腰痛の場合、腰以外にも内臓などに原因があることも考えられます。
そのため、一度病院に行き、レントゲンなどの検査を受けるのがおすすめです。

内科的な検査を行うことで、的確に対処できるようになります。

このタイプでは、何とか動けることが多いですが、腰が張ったり、重く感じたりといった症状が残りやすいため、注意しなければなりません。

 

【ぎっくり腰のタイプ】

2.腰椎椎間板ヘルニア

椎間板は、髄核という柔らかい組織とそれを覆う線維輪という硬い組織で構成されています。

椎間板ヘルニアとは、線維輪に裂け目が生じ、中の髄核が飛び出した状態です。
髄核が神経を圧迫することで、神経が炎症を起こし、痛みが生じます。

20代から40代の比較的に若い人に多く見られます。
急に重いものを持ち上げるなどの日常生活での動作やスポーツなどが原因であることが少なくありません。

その他にも、普段の姿勢や遺伝、ストレスが関係していると考えられています。

急性期には、痛みの程度によって、活動を制限することが望ましいです。
ただし、症状によっては早急に手術が必要とされる場合もあるため、一度専門医に相談することをおすすめします。

 

【ぎっくり腰のタイプ】

3.腰部椎間関節性腰痛

腰椎椎間関節とは、腰の骨の継ぎ目のことを指しています。
腰は、上半身と下半身のバランスを保つため、多くの筋肉が発達している場所です。

普段の姿勢や長時間のデスクワーク、妊娠による急な体重の増加など、腰にストレスがかかると、腰椎椎間関節の神経が興奮し、痛みを感じるようになります。

また、加齢によって変形が起こりやすい場所でもあります。

原因は、加齢や姿勢、遺伝などさまざまです。

特に長時間のデスクワークの場合、体重が腰にかかり、筋肉や腰椎の血流が悪くなるため、神経が圧迫されて、痛みが出やすくなります。

腰部椎間関節腰痛の主な症状として、お辞儀をするときに痛みが強くなります。

椎間関節に負荷がかかりすぎると、椎間関節周辺の筋肉が固くなります。
固くなった筋肉がお辞儀によってストレッチされると、神経が興奮状態になり、痛みが出るのです。

椎間関節性腰痛の場合、下の画像にあるような背骨の棘突起という部分の感覚が鋭くなり、押すと痛みを感じやすいという特徴もあります。

 

【ぎっくり腰のタイプ】

4.仙腸関節性腰痛

仙腸関節性腰痛は、ぎっくり腰に多く見られる原因であり、慢性的な腰痛や産後の腰痛の原因のひとつでもあります。

上の図のように、背骨を骨盤で受け止める仙骨と一般的に骨盤と呼ばれる腸骨とのつなぎ目を仙腸関節いいます。

仙腸関節は、肩やひざのように大きく動くことはできませんが、歩行するときや座るときなどにわずかに動きます。
この関節は負荷を伝達する役割を持っているため、他の関節よりも摩擦係数が大きくなっています。

また、この関節は、腰のさまざまな筋肉が収縮することで受動的に動く関節です。
そのため、機能不全を起こすと治りにくくなってしまいます。

仙腸関節性腰痛の場合、痛みがある部分をピンポイントで指さすことができるという特徴があります。

疲労性の腰痛と違い、鋭く刺されたような痛みと表現されます。
仙腸関節性腰痛を経験した方の多くが、仰向けで寝るのがつらく、横向きで寝るのが楽だといわれています。

洗顔をするために腰をかがめたときやズボンをはこうと足を持ち上げたとき、どちらかのお尻に体重をかけたときに痛みが起こる場合があります。

 

ぎっくり腰の応急処置

【安静】

ぎっくり腰になった場合は、安静にすることが大切です。
ぎっくり腰は最初の激痛を乗り越えれば、痛みが落ち着く場合がほとんどです。
激しい痛みが落ち着くまでは、無理に動かず、楽な姿勢をとるようにしましょう。

【アイシング】

必ず、アイシングを行ってください。
ぎっくり腰は体の中で炎症や出血が起こっているので、湿布ではなく、アイスノンや氷水など体の深部まで届くようなものを使用するようにしてください。

凍傷を防ぐために、長時間直接肌に当てたままにするのは避けましょう。

炎症や出血は72時間続くといわれていますので、その間はしっかりと冷やします。

アイスパックの作り方
1.ビニール袋に氷を4割入れます。
2.凍傷予防のため、氷を水で濡らします。
3.水を抜きます。
4.袋の中の空気を出来るだけ抜きます。
5.袋を閉じます。

(参考:【腰痛時のアイシング方法】アイスパックの作り方と使い方―Lumbago firmly cured しっかり治す腰痛)

【コルセット】

コルセットを持っている場合は、着けることをおすすめします。

腰回りが安定し、症状が楽になります。

【痛み止め】

痛み止めは飲んでも構いません。
ただし、痛み止めが効いているからといって激しい運動などをするのは止めましょう。

また、胃腸に負担がかかりますので、毎日飲み続けるのは避けた方が良いでしょう。

【病院】

しかし、これらはあくまで応急処置でしかありません。
最初の痛みが治まり、少し歩けるようになってから、近くの医療機関へ行くようにしましょう。

 

ぎっくり腰になったときのNG行為

次のような行動は行わない方が良いでしょう。
間違った認識では、かえって症状を悪化させてしまう場合があります。

特に痛みが強い初日から2.3日は避けてください。

①入浴

ぎっくり腰でもお風呂へ入って大丈夫か迷う方は多いのではないでしょうか?

ぎっくり腰の痛みの程度はさまざまです。
痛みが強く、動けない場合は、入浴を控える方が多いようです。

しかし、頑張れば動ける程度のぎっくり腰の場合、お風呂の入り方によって症状が悪化することもあります。
ぎっくり腰は、腰に激痛が走った瞬間動けなくなるケースばかりではありません。
時間がたつにつれて痛みが強まることもあり、最初は痛みが弱くても、基本的にお風呂に入って体を温めることは避けた方が良いでしょう。

どうしても入浴したいという方は、汗を流す程度で軽くシャワーを浴びるなど、短時間で済ませることがポイントです。

しかし、シャワー程度でもその後痛みが強くなることもあります。
できれば、濡れたタオルで体を拭くのにとどめた方が良いでしょう。

②マッサージ

ぎっくり腰の場合、安静が第一です。
マッサージを行うと炎症がよりひどくなってしまいます。

ただし、再発防止や予防には有効です。
マッサージをすると、筋肉の緊張がほぐれ、血行が良くなるため、筋肉の疲労や緊張による腰の痛みを緩和させることができます。

患部の炎症や腫れが治まり、痛みがなくなったら、マッサージで再発防止に役立てましょう。
また、日頃からマッサージを行うのは、腰痛の予防にもなります。

ぎっくり腰の予防に効果的な「らせんマッサージ」をご紹介します。

らせんマッサージ
1.手の親指と人差し指で輪を作ります。
2.その輪を背骨の上に置くようにします。
3.背中から腰へ、背骨をらせんを描きながら、3分程マッサージしていきます。

(参考:ぎっくり腰予防のマッサージ―ぎっくり腰の治療・原因・症状~腰救急隊)

③ストレッチ

インターネット上で、専門家によるストレッチが多く紹介されています。
しかし、独断で自分なりのストレッチをしてしまうと、症状の悪化の原因につながるのでやめましょう。

 

ぎっくり腰治療の新常識!腰痛は動いた方が治りが早い?

ぎっくり腰を起こした直後は、安静にした方が良いというのはもちろんです。
しかし、最近の研究では、安静にしている期間が長ければ長いほど、治りが遅くなるというデータも出ています。

海外で以下のような調査が行われている。
急性腰痛の患者を、「2日間、トイレ以外はベッド上で安静」にしているよう指示したグループ、理学療法士が指導して「身体を前・横・後ろの各方向に10回1セットで動かす運動」を行ったグループ、「なるべく普段の活動をする」よう指導したグループの3つに分けて追跡調査をした。
その後、腰痛の持続期間や程度、欠勤日数、仕事への支障の程度などを比較したところ、明らかに「なるべく普段の活動をする」グループが最も良く、次に理学療法士が指導したグループで、安静にしたグループが一番悪い結果だった。
また、日本でぎっくり腰を起こした人に対して行われた調査では、「腰痛が治るまでできるだけ安静を保つように指導された人」と、「動ける範囲内で活動するよう助言された人」の、翌年の再発率を調べたところ、安静を指導された人のほうが、動ける範囲内で活動を指導された人の3倍も、ぎっくり腰を起こしていたのである。

(引用:ギックリ越しになったら動かずにベッドで安静は逆効果!これまでの腰痛治療の常識が変わってきた!―健康・医療情報でQOLを高める~ヘルスプレス/HEALTH PRESS)

この結果からもわかるように、できるだけ寝込むことは避けるべきだという考えもあります。

しかし、痛みを我慢して、無理して動く必要はありません。
ちょっとずつなら動かせるという状態であれば、足首などからゆっくり動かしていくと良いでしょう。

ただし、内臓疾患の腰痛や明らかな神経症状の腰痛の場合は、無理して動かそうとはしないでください。

 

まとめ

いかがでしたか?

もちろんぎっくり腰にならないに越したことはありませんが、もしなってしまったときは正しい知識で対処できるようにしましょう。

今回ご紹介した対処法は、あくまでも病院へ行くまでの応急処置に過ぎません。
病院に行くのもしんどい場合や祝日で病院が開いていない場合など、病院に行くまでのケアとして参考にしてみてくださいね。

速やかな回復のためにも、ぜひ覚えておきましょう!