気になる顎の違和感!顎関節症は病院へ行くべき?
日常生活に支障が出る場合や放置していると悪化していくことが予想される場合でなければ、誰だってできれば医療機関にはかかりたくないもの。「あれ?何だかちょっとおかしいな」と思っても、しばらく様子を見るという人が殆どなのではないでしょうか。そんな「微妙な」症状の1つが、顎に関係する症状。例えば顎を開け閉めするとカクカクと音が鳴ったり、食べ物を噛んでいると顎がだるくなったり疲れたりするという人は、「顎関節症」を発症しているのかもしれません。
顎関節症は勿論医療機関で治療してもらえる「疾患」の1つですが、このような軽症の場合診察をためらう人も少なくないでしょう。実際、「顎の開け閉めで音が鳴る」という程度であれば世界的にも「治療の必要はなし」と見なされていますし、顎の痛みや口の開けにくさを感じても数日後には自然に解消されていることも多いため、1週間くらい様子を見て受診するかどうかを判断すると良いと言われています。
一方、命に係わる病気ではないものの、顎関節症も重症化すると顎だけでなく頭痛や肩こり、耳鳴り等を併発し、更には全身に影響が及ぶことさえあるため、放置しておくべきでないケースもあります。そこでここでは、顎関節症の症状や原因、治療法などをご紹介したいと思います。
顎関節症とは?
顎関節症とはその名の通り、耳の穴の手前にある顎の関節が原因で起こる疾患のことで、現在その病態によって4種類に分類されています。まず顎関節症の中でも最も多い病態とされているのが、顎関節内にある「関節円板」のずれ。関節円板は上顎と下顎を繋ぐ関節の間にあってクッションの役割を果たしているのですが、これが本来の位置より前方にずれてしまうと、口の開け閉めの際にカクカクと音が鳴ったり、更にずれが大きくなると口を開けたりものを噛んだりしようとするたびに痛みを感じるようになります。
この関節円板のずれ以外の病態としては、下顎を動かす筋肉がうまく働いていない状態、あるいは関節部分が傷ついて捻挫を起こしている状態もあり、これらの場合には口を開けようしたときに顎関節や頬、こめかみなどに痛みを感じるようになります。最後の4つ目は顎関節を形成している骨自体が変形してしまっている状態で、他の3つのケースと比べると比較的稀なのですが、高齢者や長く顎関節症を放置していた人に見られる病態とされています。
顎関節症の原因は?
これで顎関節症は関節円板や関節周囲の組織、筋肉の障害、あるいは関節の骨そのものの変形であることが分かりましたが、それではなぜ、それらの組織に障害や変形が起こってしまうのでしょうか。一言で言えば、それは「繰り返し顎関節や周辺組織に大きな負荷を与え続けているから」。しかしその「負荷」となる要因は実は1つではなく、幾つかの要因が重なり合って起こるとされており、これを「多因子病因説」と言います。
「多因子」の中には、噛み合わせの悪さ以外に歯ぎしりや食いしばりなども挙げられており、これらの癖はストレスにより無意識に行うことが多いことから、顎関節症がストレスと関連付けられることも少なくありません。また「TCH(歯列接触癖)」という不必要に上下の歯を接触させる癖を持っている人や、頬杖をつく癖、片側だけで噛む癖、うつぶせに寝る癖などを持っている人も、左右どちらかの顎関節に偏った負担をかけているため、顎関節症の罹患率を高めるとされています。
顎関節症の治療法は?
顎関節症は非常に発症率の高い疾患なのですが、実は最も効果の高い施術法というものが今のところ明確になっていないため、各専門家で施術方法にばらつきがありますし、病態によっても適切な施術法は異なってきます。とは言え噛み合わせや歯ぎしり、食いしばりが大きな原因となっている場合にはマウスピースを使う施術が一般的で、院内で作成したマウスピースを就寝中に着用し、顎関節や筋肉への負担を軽減させます。勿論痛みがある場合には鎮痛剤を使用しますし、近赤外線レーザーを照射したり電気刺激を与えたりすることで症状を改善させていくこともあります。
また前述の通り顎関節症は無意識で行う癖が引き金となっていることが多いため、それらを直したり筋肉ストレッチや関節円板のずれを戻す運動を行ったりと、自宅でのセルフケアも欠かせません。特に歯ぎしり・食いしばりはストレスが原因となっているため、その根本原因へのアプローチも必要となってくるでしょう。
まとめ
2人に1人は一生のうち一度は経験するともいわれている、顎関節症。しかしその7割は1年以内に症状が改善すると言われていますし、施術が必要な場合であってもたいていは前述のような理学療法やセルフケアが中心で、外科療法が採られるようなことは滅多にありません。気になる人は専門家に相談し、理学療法や生活習慣の改善指導を受けたりすると良いでしょう。何でも相談でき信頼できる専門院を持つことは、顎関節症だけでなく他の疾患を未然に防ぐ意味でもお勧めの方法です。