関節の可動域の制限とその種類
わたしたちの身体というのは大変、優秀にできています。しかし優秀であるがゆえに私たちはあまりに自然に動く自分の身体にあまり興味を抱かないものです。今回はそんな身体のなかにある関節について記事を書いていきたいと思います。
実は私たちの体には合計260以上もの関節が存在していると言われていますが、関節の主な役割は当然、骨と骨とを繋ぎその部分で曲げたり伸ばしたり旋回したりといった「関節運動」をすることにあります。しかしこの関節の可動域が狭まり日常生活に支障を来してしまうことがあり、これを拘縮(こうしゅく)と呼びます。今回はそんな拘縮が起こる様々な原因を確認していきたいと思います。
関節の可動域の制限とは
「日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会」では各関節ごとの可動域を定めた「参考可動域」があり、健康な人であればこの参考可動域で各関節を自由に動かすことができるはずです。
ところが何らかの原因で参考可動域を持たない、つまり健康な人であればできるはずの関節運動ができない人もいます。そのうち軟部組織が原因で可動域が制限されている場合を、「拘縮」と言います。ここでいう「軟部組織」とは、腱・靭帯・皮膚・脂肪組織・血管・筋組織・末梢組織神経のこと。一方骨や軟骨の変形や炎症によって癒着が起こり関節が動かなくなることは「強直」と言い、この場合は手術が必要になることもあります。
拘縮の種類と原因
前述した通り拘縮は軟部組織のいずれかが障害されることで起こるもので、どの部分が障害されているかで大きく5種類に分けられます。
そのうち最も多いのが「筋性拘縮」で、これは筋肉が縮んでしまうことで関節が引っ張られて可動域が制限されている状態です。例えば寝たきりの人や骨折、病気などで特定の筋肉を長期間動かさずにいた場合に、筋肉が萎縮して関係する関節が動かなくなってしまうのです。
また長期間特定の筋肉を動かさずにいると、その部分の皮膚も萎縮して関節を引っ張り、動かしにくくなってしまいます。これを「皮膚性拘縮」と言いますが、皮膚性拘縮は寝たきりや関節の固定以外にも、例えば火傷や手術などによって皮膚がひきつれてしまうことでも起こります。
皮膚の下にある靭帯や腱、腱膜が収縮することで起こる拘縮は、「結合組織性拘縮」と呼ばれます。これは寝たきりやケガ、病気というよりは手の使い方のような日常的な習慣が原因で起こるもので、例えば手を酷使することで起こる「ばね指」が代表的なものと言えるでしょう。
一方脳卒中やくも膜下出血などの脳神経の病気によって引き起こされる拘縮は、「神経性拘縮」と呼ばれます。これは脳神経の損傷により筋肉が麻痺したり異常に緊張したりすることが原因で、こうして障害を受けた側の筋肉の使用を避け使いやすい方の筋肉ばかりを使用していると、更に拘縮が進むという悪循環に陥ります。
最後の「関節性拘縮」は、関節にある靭帯や関節包が炎症したり骨折などで長期間固定したりすることで起こる関節可動域の制限です。これは骨折などで長期間固定していた場合や、ギブスの固定が適切でなかった場合にも起こると言われています。
まとめ
今回は様々な原因で関節の可動域が制限される拘縮について記事を書いてまいりました。文中にもありますが、拘縮はなにも病気や寝たきりが原因で起こるわけではありません。例えば不適切な姿勢でデスクワークを続けていたり、運動不足、加齢などにもよって関節や皮膚、軟部組織には拘縮が現れます。
その改善策をあげるのであればやはり、運動不足の解消がおすすめですが、例えばデスクワーカーやトラック運転手の方などどうしても固定された姿勢を続けないといけない方は一時間あるいは二時間に一度、作業を止めて体操するなど決まった姿勢が「長時間」にならないように注意すると身体への負荷は少なくなります。
また関節の可動域があきらかに減少てしているという方は下記のようなストレッチを行うこともおすすめです。
関節可動域訓練のやり方
それでは、具体的な関節可動域訓練について見ていきましょう。
足関節を動かす際には、まず踵を包むようにして足を持ち、前腕を中心に足全体を押して筋肉を伸ばすストレッチをしましょう。 これによりふくらはぎの筋肉が伸びるので、この状態を3~5秒維持してゆっくりと元に戻します。 この動作を繰り返すことで、徐々に筋肉が柔らかくなり足関節の可動域は広がります。
足趾を動かす際には、まずは足の親指と人差し指を持って上下に動かしてみましょう。 この動作を人差し指と中指、中指と薬指、薬指と小指の容量で全ての指で行っていきます。 各運動5~10回1セットを1日に2~3セット行い、毎日継続することで足首の可動域は広がるでしょう。
肩・肘を動かす際には、まず仰向けになり痛くない方の手で痛い方の手首を掴みます。 痛い方の腕は力を抜き、痛くない方の腕でゆっくりと頭上に挙げていき、軽い痛みが出た箇所で動きを止めます。 軽い痛みがある状態を10秒キープし、この動作を10回行うことで、肩と肘の関節を動かすことができます。
引用:学研 ココファン