交通事故によるむち打ちは湿布で治るのか!?むち打ち症と湿布の関係

2018年7月16日

「なんだか首が痛い…」
「首がまわらない…」

交通事故によって、首に不自然な力が加わると、このような症状が出ることがあります。

これは、むち打ち症」呼ばれるケガの一種です。

むち打ちはレントゲンに写らないため、病院でも異常なしと診断されることがあります。

実は、医師によって意見が分かれるほど診断が難しいケガでもあるのです。

病院で異常がないと診断されると、ほとんどの方はなんともないと思うでしょう。

また、むち打ちは、事故直後は症状が出ないことがあります。

しかし、むち打ちを軽く見てはいけません。

めまいや耳鳴り、眼精疲労、腰痛、さらには後遺症まで残ってしまうケースがあるのです。

むち打ちの症状が出ているとき、自分でできるケア方法として、湿布を使っている人も多いのではないでしょうか?

今回は、むち打ちと湿布の関係についてご説明します。

「むち打ちは湿布で治るの?」「温湿布と冷湿布どちらをつかうべき?」などの疑問にもお答えしていますので、ぜひお読みください。

 

むち打ちの85%は、交通事故!?

むち打ちは、正式には、「外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」、または「頚椎捻挫(けいついねんざ)」ともいわれます。

一般的に、交通事故による首やその周辺の打ち身や捻挫、骨折、頭部外傷などを「むち打ち」という通称名で呼ぶことが多く、診断名として「外傷性頚部症候群」や「頚椎捻挫」がつけられる場合が多いです。

むち打ちは、その名の通り、交通事故などの衝撃で、体がムチを打ったときのようにしなることからこのように呼ばれています。

むち打ちの原因の85%は、交通事故の際の後方からの追突です。

車に追突された衝撃で、体が急激に前へ押し動かされてると、頭は動かないようにそのままとどまろうとします。

その結果、頚椎や脊椎にダメージを受けたり、手や肩を車や道路に打ちつけた反動で首の筋肉を傷めたりしてしまうのです。

また、これらの外的な要因だけでなく、事故やケガによるストレスで血流が悪化し、首や肩に痛みやこりが発生する場合があります。

 

むち打ちの症状

むち打ちの症状は、人によってもさまざまです。

主な症状としては、次のものが挙げられます。

・首や肩、腕の痛み
・首がまわらない
・肩こり
・頭痛
・めまい
・目のかすみや疲れ、眼精疲労
・吐き気
・握力の低下
・手や指先、足しびれやのまひ

むち打ちの症状には個人差があり、事故の状況や本人の年齢などによっても異なります。

横になっていると症状が軽くなり、立ち上がると症状がはっきり表れるという人も多いようです。

また、女性は男性よりも首が細く、筋肉量が少ないため、むち打ちを起こしやすいといわれています。

 

むち打ち5つの種類

実は、一言でむち打ちといっても種類があり、この類型ごとに症状が異なります。

むち打ちの種類は、次の5つです。


1.頚椎捻挫型
2.バレー・ルー症候群型
3.神経根損傷型
4.脊椎損傷型
5.脳脊髄液減少症


 

【むち打ちの種類】

1.頚椎捻挫型

むち打ちの大部分がこの「頚椎捻挫型」です。

事故の衝撃で、首が激しく揺さぶられ、首の筋肉や靭帯が傷つき、捻挫となったもので、運動制限を中心とした症状が現れます。

主な症状は、首や肩、背中の痛みやコリ、だるさ、重さなどです。

 

【むち打ちの種類】

2.バレー・ルー症候群型

「バレー・ルー症候群型」は、事故による衝撃で、首周辺の自律神経が傷つくことが原因で症状が現れます。

主な症状は、吐き気やめまい、耳鳴り、息苦しさなどです。

また、次のような症状が出ることもあります。

・知覚障害やしびれなどの神経障害
・耳鳴りや聴力低下などの聴覚障害
・嚥下障害や発語困難などの耳鼻咽喉科的障害
・めまいなどの平衡障害
・かみ合わせ障害や顎関節痛などの歯科領域の障害
・不安神経症や注意力散漫などの神経心理学的障害

 

【むち打ちの種類】

3.神経根損傷型

神経の根本部分である神経根がダメージを受けることが原因となるのが、「神経根損傷型」です。

神経根の場所に応じて、しびれを感じる、力が入らないなどの症状が現れます。

 

【むち打ちの種類】

4.脊髄損傷型

「脊髄損傷型」の場合、脊髄に直接ダメージが及ぶことによって、症状が現れます。

体にまひが残り、知覚障害や歩行障害を引き起こす場合もあります。

その場合、後遺障害として今後も残ってしまう可能性もある非常に危険な症状です。

 

【むち打ちの種類】

5.脳脊髄液減少型

「脳脊髄液」とは脳と脊髄を覆っている液体で、脳はこの循環液の中で浮いた状態になっています。

この髄液が漏れ出し、減少すると、脳が浮力を失って、神経や静脈が引っ張られ、さまざまな症状が起こるのが「脳脊髄液減少症」です。

主な症状は、次の通りです。

・頭痛
・吐き気
・首の硬直
・背中の上部の痛み
・倦怠感
・疲れやすさ
・めまい
・歩行困難
・目のかすみ
・視力低下
・耳鳴り
・難聴
・上肢の痛みやしびれ
・腰痛

医師の間でも認知度が低く、門前払いされる例もあるほどです。

発症からそれほど時間のたっていない場合、安静や水分補給、点滴などの保存療法で半数以上の症状が軽快しますが、保存療法の効果がない場合は『ブラッドパッチ療法』が行われます。

これは、髄液が漏れ出している穴を患者自身の血液でふさぐ治療です。

この治療で、75%(15歳未満では90%)に、何らかの改善がみられるそうです。

しかし、命にかかわる病気でありながら、このブラッドパッチ療法には保険が適用されません。

小澤さんは現在、脳脊髄液減少症の患者団体の副代表を務めているが、団体を立ち上げたのは、同じ病に倒れた友の死がきっかけだった。
「時間があるときでいい。この病気があることを知ってほしい。少しでも認知度を上げてほしい」
友人は、最後にそう言い残し、自ら命を絶ったという。

(引用:自ら死を選ぶ人もいる「脳脊髄液減少症」の恐怖―週刊女性PRIME)

重い症状に苦しみ、さらに多額の治療費がかかることから、自ら死を選ぶ人もいるという厳しい現実があるのです。

(参考:むち打ちの症状―むち打ち.com)

 

交通事故にあってしまったら必ず病院へ!

むち打ちの治療で、大事なのが「事故直後の対応」です。

痛みや違和感がある場合はもちろん、自覚症状がない場合でもすぐに病院へ行きましょう。

事故直後は、安静にするのが鉄則。

ここを怠ると、一生後遺症が残る可能性があるのです。

むち打ちは数日後に症状が現れやすいという特徴を持っています。

また、交通事故直後の興奮状態で痛みを感じていない可能性もあります。

痛みが出るまで待つのではなく、なるべく早く検査を受けるべきです。

最初に書いたように、むち打ちはレントゲンに映らず、病院でも異常なしと診断されるケースが少なくありません。

しかし、いつまでも良くならない場合は、神経や脊髄を損傷している可能性もあります。

以下の自覚症状がある方は、医師に詳しく伝えるようにしましょう。

・異常なしと診断されたが、いつまでたっても良くならない
・少し運動した後や仕事の後に症状が現れる
・天候の変化で症状が現れる
・頭痛や倦怠感、疲労感、不眠、めまい、集中力の低下などの症状がある
・痛む場所が変わる

そして、事故直後、首を無理に動かしたり、温めたりしてはいけません。

「頸椎カラー(コルセット)」で首を固定するのも有効です。

当然、痛いからといって首付近をマッサージするのは危険ですので、やめてください。

かえって治りを遅くしてしまいます。

 

むち打ちは湿布で治る?

むち打ちによって首や肩に痛みが出ているとき、湿布を使うという人も多いでしょう。

むち打ちは湿布で治るのでしょうか?

湿布の主な効果は、痛みや腫れ、赤み、熱感などの炎症を抑える「消炎鎮痛効果」です。

湿布薬の痛み止め成分は皮膚から吸収され、作用します。

たしかに、湿布を貼れば、一時的に痛みが和らぎます。

しかし、むち打ちは、筋肉がダメージを受けたことによる炎症だけでなく、事故の衝撃による頸椎のゆがみが原因です。

そのため、湿布を貼るだけでは炎症や痛みは抑えられても、根本的な原因を解決することはできません。

つまり、湿布は問題を先送りにすることにもなってしまうのです。

 

むち打ちには温湿布と冷湿布、どちらを使うべき?

上記のように、むち打ちが湿布だけで完全に治ることはあり得ません。

しかし、その時々のつらい症状をある程度抑えることは可能です。

次回通院するまでの症状を抑えるためであれば、有効に使うことができます。

交通事故のむち打ちの場合、温湿布と冷湿布どちらを選ぶのが良いのでしょうか?

事故直後、首や肩に痛みや腫れ、熱感などの炎症があるときは、「冷湿布」でしっかり冷やすようにしてください。

痛みが和らいで、炎症が治まるまでの間はしっかりと冷却しましょう。

個人差がありますが、事故直後から10日間くらいが目安です。

痛みや炎症が和らいでからは、「温湿布」に変えましょう。

温湿布で患部を温めることによって、血行が良くなり、患部の修復を促進する効果があります。

湿布には、直接皮膚に貼って使用するため、肌が弱い人は、かぶれなどの副作用が出る場合があります。

また、胃潰瘍などの病歴がある人は、長時間貼り続けることは避けてください。

喘息などのアレルギーがある人も使用に注意が必要です。

 

まとめ

今回は、むち打ち症についてご紹介しました。

交通事故にあった場合は、すぐに病院へ行きましょう。

やはり、専門医にきちんと診断してもらったうえで、適切な治療を行うことが大切です。

湿布の使い分けについても、医師のアドバイスをもらうようにしてください。

安易に自分の力だけで治そうと考えてはいけません。

少しでもおかしいと感じたら、すぐに医師に診てもらうようにしましょう。