地震前の頭痛や耳鳴り…「電磁波過敏症」の可能性も?地震が体調不良を引き起こす理由

2018年7月26日

地震大国といわれるほど世界的にも地震の多い日本。

震度の大きいものから小さいものまで頻発しているせいか、地震の発生を体感で予知できる人が増えているそうです。

 

地震発生前の体感としてよく挙げられるのが「頭痛」です。

大地震の前にはこれまでに経験したことのないほどの痛みで鎮痛剤を飲んでもなかなか良くならなかったり、立っていられないほどのめまいで寝そべったりという人も…。

 

頭痛で地震予知ができるなんて不思議に思われる方も多いのではないでしょうか?

今回は地震と頭痛の関係についてご紹介します。

 

地震の前兆!?イルカの大量打ち上げ

地震の発生前には、動物が普段と違う奇妙な行動をとることがあります。

2011年3月11日起きた東日本大震災の前には次のようなニュースが報じられました。

 

 

茨城県鹿嶋市の下津海岸で4日夜、約50頭のイルカが打ち上げられているのが見つかり、生きていた22頭が5日、海に帰された。

茨城県大洗水族館や鹿嶋市の職員、地元住民やサーファーらが“手当て”したが、半数以上は死んだという。

水族館によると、打ち上げられていたのはイルカの一種、カズハゴンドウで、体長2~3メートル、体重が約300キロ。

現場は千葉県寄りの海水浴場。

市によると、約200人が5日朝から表皮が乾かないようぬれたタオルをあてがったり、水をかけたりした。

約8時間で22頭を海に戻し、死んだイルカは砂浜に埋めた。

水族館の島田正幸海獣展示課長は「このあたりの沖合を回遊する春先に見られる現象。集団で泳いでいるので、餌を追い掛けて浅瀬に迷い込んだのでは」と話した。

 

(引用:茨城の海岸にイルカ50頭住民救助、一部は海に―2011年3月5日日本経済新聞)

 

イルカと地震の関連性は、未だ解明されていない部分が多くあります。

この件について水族館関係者などは、餌を追いかけている最中に浅瀬に迷い込んでしまったり、地形や海流などの影響で流れ着いてしまったりした可能性もあるとしています。

ただし、巨大地震の前後にイルカの大群が座礁した例はこれまでに何度もあるようで、すべてが偶然だと判断することはできないのではないかと考える人もいます。

 

地震発生前の体調不良

このような動物の異常行動と同じように、人間でも地震が起こる数日前から体に何らかの違和感を覚えることがあるようです。

その前兆として多いのが頭痛。

頭痛の具合で地震を予知できる人もいるのだそうです。

地震の数日前から頭痛が起きるという人もいれば、地震の直前に頭痛が起きるという人もおり、症状などはさまざまです。

 

また、頭痛の他にも前兆として挙げられる症状は次の通りです。

 

・めまい

・耳鳴り

・耳の閉塞感

・吐き気

・胸の圧迫感

・古傷の痛み

 

これらの症状以外にも、急に不安になったり、落ち着きがなくなったりというような精神症状を感じる方もいるようです。

 

地震前の体調不良やペットの奇妙な行動「宏観異常現象」

このように地震の前触れとして発生・知覚される異常現象を「宏観異常現象(こうかんいじょうげんしょう)」といいます。

頭痛やめまい、耳鳴りなど、人間の体調の変化以外の宏観異常現象には次のものがあります。

(出典:宏観異常現象の種類ー地震情報サイトJIS)

 

これらの現象は過去に起きた地震の前に目撃・体験したものとして報告されたものです。

しかし、地震との因果関係についてはまだ解明されておらず、必ずしも地震の前兆であるとは限りません。

これらの現象が起きているからといって不安になりすぎるのではなく、冷静に判断することが大切です。

 

地震予知の成功例!?中国の「海城地震」

地震発生メカニズムの解明はかなり進んでいる現代でも、地震の予測・予知は難しいとされています。

多くの専門家が研究を行っていますが、地震の発生日時や場所、規模などを的中させた例はほとんどありません。

そんな中、地震予知を成功させた例をご紹介します。

 

それが1975年に中国で発生した「海城地震」です。

中国政府はこの地震の発生前に周辺住民を避難させ、被害を最小限に抑えることができたというのです。

この地震の発生を予知できた理由も宏観異常現象にあると考えられています。

 

海城地震は1975年2月4日に発生した、マグニチュード7.3の大きな地震です。

これより前には、動物のさまざまな異常行動が政府に報告されていました。

それらを地震の前兆と捉えた政府は数日中に大きな地震があると発表し、国民を事前に避難させていたのです。

死者数は2041人に上りましたが、もし政府の避難指示がなければ、その100倍以上の人数になっていたともいわれています。

 

ただし、地震の発生前に前震と呼ばれる比較的小さな地震が頻発していた報告もあり、宏観異常現象だけで予知ができたわけではないという見方もあるようです。

 

(参考:海城地震―Wikipedia)

 

ナマズは地震を予知できるって本当?

日本にも地震とその前兆となる生き物の異常な行動について古くからの言い伝えがあります。

みなさんも「ナマズが暴れると地震が起こる」というのを1度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

 

このような俗説が広まったのは江戸時代。

ナマズを題材として描かれた浮世絵「鯰絵(なまずえ)」も有名ですよね。

これらは大ナマズが地下で活動することによって地震が発生するという民間信仰に基づいて、江戸を中心に大量出版されていたそうです。

地震の直度から出版された鯰絵は、身を守るためのお守りや不安を取り除くためのおまじないとして庶民の間に急速に広まりました。

「鯰坊主」という悪役が登場する歌舞伎の演目もあるほどです。

 

しかし、この言い伝えのルーツについてはっきりしたことはわかっていません。

ナマズと地震の関係について書かれてある書物としては「日本書紀」にまでさかのぼるといわれています。

1592年、豊臣秀吉が伏見城築城の際、家臣に当てた書状には「ナマズによる地震にも耐える丈夫な城を建てるように」との指示が書かれていたそうです。

 

では、なまずと地震の関係には科学的な根拠があるのでしょうか?

ここで2つの研究をご紹介します。

 

①神奈川工科大学の研究

この実験では、ナマズと動きを比較するための熱帯魚をそれぞれの水槽で飼育しました。

ナマズが暴れるという行動を客観的に測定するため、水槽に赤外線センサーを取り付け、ナマズや熱帯魚がそこを横切った回数を測定します。

対象としたのは、M6以上の地震と神奈川県内で有感であった地震です。

測定期間は2003年1月から10月。

この間地震は53回起こり、そのうちの15回はM6.0以上の規模を持つ地震でした。

果たして地震の前に、なまずに変化はあったのでしょうか?

 

なんと、ナマズや熱帯魚の動きに変化があった場合には52%の確率で地震が発生していたのです。

また、実際に発生した地震のうち45%で事前にナマズや熱帯魚の活動に変化が見られたのだそうです。

この研究では比較を行った地震を限定していますが、それ以外の地震を対象とするとその予測確率はさらに上昇するのではないかとされています。

つまり、ナマズの動きと発生した地震との関係にある程度の関連性があることが明らかになったのです。

 

(参考:矢田直之『ナマズと地震の関係に関する実験的研究』)

 

②神奈川県水産技術センターの研究

神奈川県水産技術センターでは、1979年から1984年の6年間ナマズの異常行動と地震の関係についての研究を行いました。

研究は本格的で、大きな水槽に5匹ほどのナマズを入れた他、より自然に近い環境ということで大きな池に30匹以上のナマズを放し、その行動を昼夜監視します。

 

しかし、これだけ周到な研究環境を整えても、この研究ではナマズの異常行動と地震の発生にはほとんど相関関係が得られませんでした。

池のナマズに関しては、発生した地震を予知してくれたことは皆無。

一方、水槽のナマズはときどき活発に動いていることが記録されていましたが、そのうち地震の前に動いたものはわずか7%だけでした。

ナマズの異常行動が激しかったり、時間が長かったりした場合には、地震が起きる確率が上がったものの全体としてはほとんど関係がないといっていい結果だそうです。

 

(参考:地震とナマズ、本当の関係は?電場感知能力は抜群も…文明が“敵”に―zakzak by夕刊フジ)

 

ナマズと地震との関係を調べる実験ではそれぞれの結果はかなり違ったものになるということが分かるかと思います。

これは個体の状況や飼育環境など、地震以外にもさまざまな要因が影響するためです。

 

しかし、近年の研究ではナマズが他の魚とは違う能力を持っていることが明らかになりました。

それは「電場を感じる能力」です。

神奈川県で最大の芦ノ湖ほどの湖に電池を1つ投げ込んだくらいの電場の変化であっても、ナマズは十分察知することができます。

夜行性でありながら視力の弱いナマズは、小魚が水中で呼吸するときにつくる非常に小さな電場だけを頼りに、暗闇で小魚を食べているそうです。

 

地震や噴火のとき、地球内部の微弱な電流の流れ方が変われば、ナマズが異常な電場を感じ、暴れても不思議はありません。

 

地震発生前の頭痛…原因は電磁波?

地震発生前に起こる頭痛をはじめとした体調不良や動物の異常行動の理由のひとつが「電磁波」です。

岩石が圧力を受けると電磁波を発生することはすでに明らかになっており、地震で地中の岩石が破壊されることによって電磁波が発生することも十分に考えられます。

地震に伴う地中での電磁波の発生は、近年多くの地震学者も認め始めています。

 

そしてこのような電磁波が、人間やその他の動物、電気製品などに影響を及ぼすとされているのです。

 

そもそも、電磁波とは空間の電気の影響が及ぶ電場と磁気の影響が及ぶ磁場の変化によって形成される波のことです。

自然の中にも存在しており、私たちが毎日浴びている日光に含まれる紫外線や赤外線も電磁波の一種です。

さらに、スマートフォンやテレビ、ラジオの電波も電磁波の一種になります。

つまり、私たちは電磁波に囲まれて生活し、電磁波がなければ文明的な生活はできないのです。

 

私たちは昔から電磁波を浴びながら生活をしており、電磁波自体が極めて有害なものであるとは言い切れません。

しかし、電磁波の種類や浴び方によっては健康被害を引き起こす可能性があるのです。

 

欧米ではいち早く人体への影響を考えて、電磁波防護基準の法制化がなされ、電磁波測定方法の規格化が進められています。

未だに研究途中で、確定した評価までは至っていないものの、一般的には人体に有害であると認められています。

イギリスでは16歳以下には携帯電話を控えるように国が勧告しているほどです。

 

子供の電磁波リスクは大人の4倍以上

電磁波は同じ量を浴びたとしても、大人よりも子供へ大きな影響を与えるとされています。

これは、子供の頭蓋骨や皮膚が大人よりも薄く、脳に多くの水分を含むため、電磁波を吸収しやすいため。

では、実際に大人と子供で電磁波の吸収にどれくらいの差があるのでしょうか?

 

アメリカのユタ大学オム・ガンジー博士による調査結果は次の通りです。

(出典:スマホの電磁波リスク 特に子供は注意が必要!おぐり近視眼科コラム)

 

この数値をSAR値といいます。

これは一定時間内に人体に吸収される電磁波の熱量を表し、この数値が高くなるほど健康被害が大きくなります。

 

表にあるように、脳内の吸収量は、成人が7.6であるのに対し、10歳児は19.6、5歳児は32.9となっています。

つまり、5歳児の脳は成人の4倍以上の電磁波を吸収してしまうのです。

 

電磁波を浴び続けるとガンになる!?

電磁波による健康への影響が叫ばれるようになった理由として3つの論文があります。

 

①ワルトハイマー論文

きっかけは、アメリカコロラド大学のナンシー・ワルトハイマー博士による「ワルトハイマー論文」です。

この論文ではコロラド州デンバーの変電所付近で、小児白血病の発生率が2.98倍、脳腫瘍の発生率が2.4倍、小児ガンの発生率が2.25倍高まることが報告されました。

 

②サビッツ論文

ワルトハイマー博士の論文は一部の専門家の間で話題になったものの、電磁波の影響がより広まったのは次のデイビッド・A・サビッツ博士による「サビッツ論文」です。

ニューヨーク州の高圧送電線敷設に対する反対運動を受け、ニューヨーク州は電力会社に費用を負担させ、デンバーでの電磁波による健康被害を報告したワルトハイマー論文を否定するため、同じ地域でより詳細な調査を実施させます。

しかし、調査の結果は、2.5mG(ミリガウス)以上で小児白血病の発症率が1.93倍、小児筋肉腫瘍の発症率が3.26倍になるというものでした。

 

③カロリンスカ報告

サビッツ博士による報告が1992年の「カロリンスカ報告」につながります。

スウェーデンのカロリンスカ研究所は、スウェーデン政府の協力を受け、過去25年に国内の高圧送電線周辺に1年以上住んでいたことのある約44万人を対象に大規模な調査を行いました。

その結果、小児白血病の発症リスクは2mGで2.7倍、3mGで3.8倍となることが報告されます。

 

ただし、このような研究結果のみで電磁波による健康被害が証明されたとはいえず、今でも世界中でさまざまな研究が行われています。

1996年にはWHO(世界保健機関)が電磁波による健康影響の可能性を科学的に解明しようと、「国際EMFプロジェクト」を設立しました。

また、これまでの疫学研究や生物学的研究を総合的に評価した関係機関によると、通常の居住環境で電磁波が人の健康に影響を与えることはないとされています。

 

(参考:「発がん性可能性あり」の持つ意味 最新電磁波事情概観―電磁波問題市民研究会)

 

地震前の体調不良「電磁波過敏症」の可能性も?

地震の前兆として何らかの体調不良を感じる人は「電磁波過敏症」なのではないかという説があります。

電磁波過敏症とは、その名の通り電磁波が原因となって引き起こされる不調の総称で、アメリカの医学者ウィリアム・レイ博士によって命名されました。

 

博士は心身の不調を訴える人たちについて調査し、電磁波過敏症の代表的な症状を次のようにまとめました。

 

1.視力障害

2.皮膚の乾燥や湿疹

3.鼻づまりや鼻水

4.顔がほてる、むくむ、ひりひりする

5.口内炎や歯周病

6.歯や顎の痛み

7.喉の異常な渇き

8.頭痛や記憶喪失、うつ症状

9.疲労や集中力の欠如

10.めまいや耳鳴り、吐き気

11.首・肩こり、筋肉や関節の痛み

12.呼吸困難、動悸、息切れ

13.腕や足のしびれ

 

この電磁波過敏症は、正式にはまだ病気として認められていません。

そのためまだわからないことが多いというのが現状です。

 

しかし、電磁波過敏症の可能性がある人は意外と多いともいわれています。

患者数は約650万人にものぼると推測している研究者おり、これは日本の全人口の約5%に当たります。

 

(参考:電磁波を浴び続けるとがんになるって本当?その他の健康被害は?―電磁波対策グッズのエコロガ『環境通信』)

 

まとめ

いかがでしたか?

地震の前兆として起こる頭痛をはじめとしたさまざまな体調不良。

それらの理由のひとつとして電磁波が挙げられます。

しかし、まだまだ研究途中で解明されていないことが多いのも事実です。

これらの症状が起きているからといって不安になりすぎるのではなく、あくまでも冷静に判断を行うことが大切です。