中年男性に多い鼠径ヘルニアとは?鼠径ヘルニアが起こるメカニズム
体調の不調というと色々と思いつくものですが、どのようなものでも初めての症状には戸惑うものだと思います。また、それが加齢によって起こるものとなると、年齢によるものだから仕方がないとあきらめてしまう方も多いと思いますが、症状を放置してしまえば悪化していくものですし、予防のために努力をしなければ病気にかかりやすくなってしまうのも事実です。
今回は特に中年男性に多いヘルニアの一種、鼠経ヘルニアについて記事を書いていきたいと思います。この疾患は例えば最近、足の付け根に押し込むと消えるふくらみがみられる、下腹部に痛みを感じる時がある、お腹が張っている感じがする。などの症状がみられる方はこのヘルニアを患っている可能性があります。それでは詳しく確認してまいりましょう。
鼠径ヘルニアとは
「脱腸」とも呼ばれる「鼠径ヘルニア」は、その名の通り「鼠径部」で起こる「ヘルニア」のことです。「ヘルニア」と言えば椎間板ヘルニアが有名ですが、そもそも「ヘルニア」とは本来あるべき位置から臓器が飛び出してしまっている状態のこと。「鼠径部」の「鼠」とはもともと男性の睾丸を指す言葉で、「鼠径部」とは「睾丸が通った道」、つまり太ももの付け根部分のことを言います。これは男性の場合、胎児の間は腎臓付近に存在する精巣が出生が近づくにつれて下降していき、生まれるころには陰嚢内に収まっているためで、この精巣が通った道(鼠径管)が太ももの付け根部分にあるため、ここを「鼠径部」と呼ぶのです。
鼠径部は胎児のときには精巣が通過できるほど筋肉が薄くなっているため、この部分を突破口にして本来お腹の中に納まっているべき腸が皮膚の下まで顔を出してしまうことがあります。これが、「鼠径ヘルニア」。このように聞くと男性のみが発症する病気かと勘違いしてしまうかもしれませんが、女性の鼠径部も男性と同様筋肉が薄くやはりヘルニアを起こしやすい部位であるため、女性であっても鼠径ヘルニアを発症することは珍しくありません。とは言えやはり罹患率は中年以降の男性の方が高く、罹患者の約80%は男性、一生のうち鼠経ヘルニアを罹患する女性は全体の3%であるのに対し、男性は27%に達すると言われています。
鼠径ヘルニアが起こるメカニズム
「もともと筋肉が薄い」とは言っても、若く健康な体であれば鼠径部の筋肉が弱すぎてお腹の中にある腸を支えきれない、ということはありません。ところが加齢によって鼠径部周辺の腹壁の筋肉や筋膜が衰えてくると、内鼠径輪(鼠径管の入口となる穴)が緩んで徐々に穴が大きくなってしまいます。こうして拡大した内鼠径輪の隙間から腸を包んでいる腹膜が脱出して「ヘルニア嚢」を作り、ここに腸が飛び出してきて「鼠径ヘルニア」となるのです。
一方、先天的な原因で起こる小児の鼠径ヘルニアもあります。この場合ヘルニアを起こす「窓口」となるは「腹膜鞘状突起」という器官で、腹膜鞘状突起とは胎児の精巣が腎臓付近から陰嚢へと下降する際に、腹膜の一部が引っ張られてできる出っ張りのことです。本来腹膜鞘状突起は出生時までに自然と閉鎖するものなのですが、これが何らかの原因で開いたままになって生まれると、これを「通り道」として脱腸を起こしてしまうことがあるのです。
まとめ
今回は先天的なものを除けば主に加齢によって引き起こされる鼠経ヘルニアについて記事を書いてまいりました。文中にもありますが、ヘルニアの原因にもなる筋肉の衰えは内臓が支えられなくなるだけでなく、関節などにも負荷を与えることになり、膝に関する病気になりやすくなるので注意が必要です。
また以下の引用にもありますが、鼠経ヘルニアは発症してしまうと、単純な筋肉トレーニングはむしろNG行為となってしまうので、やはり普段からトレーニングを心がけ、実際に発症してしまった際には専門家に相談するようにしましょう。
すでに発症した鼠径ヘルニアにとって、腹圧のかかる筋肉トレーニングは禁忌!余計に穴が拡がってしまいかねません。
鼠径ヘルニアを発症する前であれば、筋力トレーニングは全身の筋力アップにつながるのでプラスに働きますが、発症してしまったら時すでに遅しです。
鼠径ヘルニアの穴は、筋肉ではなく筋膜に空いた穴です。筋肉は鍛えることができますが、筋膜は鍛えられません。
(中略)
鼠径ヘルニアの悪化を防ぐ3つのポイント
太らないこと:内臓脂肪がつくとその重みが鼠径ヘルニアの負担になります。
腹圧がかかる動作を控えること:腹筋やダンベル使用のトレーニングなど、お腹に強い力がかかる運動は避けましょう。鼠径ヘルニアの負担になります。軽いジョギングなどの全身運動は違和感がなければ適度に行っても構いません。
一日に1回以上必ず中に押し戻すこと:鼠径ヘルニアの嵌頓(かんとん)状態になることを予防するために、鼠径ヘルニアが出っぱなしにならないように意識しましょう。
引用:大宮セントラルクリニック